外では梅雨らしい雨がずっと降り続いている。雨の日は校庭が使えないから、皆どんよりとしているが、今日は違った。
「はーい、それじゃあこのグループで決定しまーす」
どうやら僕が寝ている間に校外学習のグループが決まったようだ。中学生になって最初の行事、校外学習。毎年7月の初めに川越に行くことになっている。皆は楽しみにしているが、僕はそんなに興味がなかった…のだが。決まったグループが書かれている黒板に自分の名前を見つけ、その後にメンバーを見る。僕は固まった。紗理奈が同じグループだなんて。心臓だけがバクバクと音をたてる。顔が熱い。周りにバレていないだろうか。恥ずかしさと同時に嬉しさが込み上げる。思わず口角が上がりそうになり、慌てて顔を隠そうとしたとき、チャイムが鳴った。
「起立、礼!」
「ありがとうございました!」


横山紗理奈。僕の小学一年生からの幼馴染みだ。初めて会ったときから可愛い子だった。活発で、弾けるような笑顔を持っている紗理奈が、僕は今までずっと好きだった。いじめられっ子の僕をいつも守ってくれていた紗理奈。彼女が同じクラスで、しかも校外学習まで一緒にいられるとは…
「優人くん!」
自分の席でボーッとしていた僕は声の主を見上げる。紗理奈だった。
「優人くん、同じグループだね!よろしく!」
「うん、よろしく」
きっと赤くなっているであろう顔を見られたくなくて、眩しい笑顔の紗理奈から目を逸らして答える。「紗理奈ー。次、移動教室だよ。早く行こ」
紗理奈は友達が多い。まだ僕と話したそうにしていたが、「ごめん、じゃあまた」と言い残して友達のもとに走っていった。紗理奈の後ろ姿を見て、僕は溜め息をついた。なんであれしか話せなかったんだろう。せめて目を合わせれば良かった。小さい頃はもっと話せていたのにな…。様々な後悔が残っていたが、その日にまた紗理奈と話すことはなかった。