【電子書籍化】内緒で出産したら、俺様御曹司と結婚することになりました。



今にもキスできそうな距離で、このまま目をつぶったら――なんてことを考えてしまう私は、もう重症だろう。



「ったく、どこでそんなこと覚えてきたんだ?」


「もっとよんで?」


「はぁ?」



全く顔色の変わらない晃輝が面白くなくて、私はもっと詰め寄ってみた。


……名前を呼んで欲しいという下心はあったけれど。



「名前……よんでくれないの?」


「くっ……そんな顔、他ですんなよ」



いつまで経っても呼んでくれないことに悲しくなってくる。


だけど次の瞬間――。



「雪音……」



ハッキリと私の耳元でそう言った。


直接耳にかかる息がくすぐったくて、甘い変な声が出そうになる。



「ん……いい……もっと……」


「はぁ……ったく、そんな甘い声出して可愛い反応して……俺に食われても知らねぇぞ」



こんな気持ちになるのは初めてだった。


自分で自分を抑えられなかった。

ずっと忘れることのできなかった初恋の相手――、そんな晃輝に求められるなら喜んで差し出したい。