今にもキスできそうな距離で、このまま目をつぶったら――なんてことを考えてしまう私は、もう重症だろう。
「ったく、どこでそんなこと覚えてきたんだ?」
「もっとよんで?」
「はぁ?」
全く顔色の変わらない晃輝が面白くなくて、私はもっと詰め寄ってみた。
……名前を呼んで欲しいという下心はあったけれど。
「名前……よんでくれないの?」
「くっ……そんな顔、他ですんなよ」
いつまで経っても呼んでくれないことに悲しくなってくる。
だけど次の瞬間――。
「雪音……」
ハッキリと私の耳元でそう言った。
直接耳にかかる息がくすぐったくて、甘い変な声が出そうになる。
「ん……いい……もっと……」
「はぁ……ったく、そんな甘い声出して可愛い反応して……俺に食われても知らねぇぞ」
こんな気持ちになるのは初めてだった。
自分で自分を抑えられなかった。
ずっと忘れることのできなかった初恋の相手――、そんな晃輝に求められるなら喜んで差し出したい。



