働いている皆さんには申し訳ないけれど
正直嬉しい
『そうなんだ。ケーキまだ作りかけ・・・』
「一緒に作ろうか・・ケーキ。だから、そろそろこっそりと撤収だな。」
『うん!!!でも、こっそりというわけには・・・』
「じゃあ、一応挨拶してから行くか?」
『うん!!!!!』
「じゃあ、行くぞ」
握ったままだったお互いの手にぎゅっと更に強い力を籠めた。
「皆さん!!!今日はお忙しい中、僕らのために、こんなに盛大にお祝いして下さってありがとうございました。」
『本当に嬉しかったです。ここにまた戻ってきたいです。ありがとうございました。』
「それじゃ、花嫁を独り占めさせてもらいます。」
あれ?
ナオフミさん、やけにあっさりな挨拶?!
『えっ、もう?・・・キャッ!!!!!』
「お先に失礼します!」
『・・します!!!!!って・・・ナオフミさん?!』
「走るぞ!!!!!今を逃すと帰れなくなるからな。皆、久しぶりに伶菜と話したそうな空気だから。」
“あっ、日詠先生に伶菜さんを持っていかれた!!!!”
“せっかく久しぶりに伶菜さんの顔を見れたのにィ~”
“待て、おっさん。レイナを独り占めとかあり得んだろ?!”
ナオフミさんは背中から聴こえてくる声にも構うことなく私の手を引き、走り始めた。
「ドレス、踏まないように気をつけろな。」
彼は私の手を引きながら産科病棟の端にある業務用エレベーターに乗り込み、8階のボタンを押した。
業務用のエレベーターはいつも患者さんが乗るエレベーターとは異なり、やけに広くなんか落ち着かない。
「業務用エレベーターに、ウエディングドレスって、怪しいよな。」
それを見透かされたのか
手を繋いだままの彼にエレベーターの角に追い込まれるし。
エレベーターって防犯カメラあるはずなのに
ナオフミさんが何か仕掛けてきそうな空気を漂わせている。
ある意味断崖絶壁状態。
それを裂くようなチン♪というエレベーター到着音が鳴り響いた。
『降りないと。』
「まだ、5階だろ?」
5階って、誰か乗ってくるかもしれないと私は焦っているのに、
彼はそんなことどこ吹く風。
案の定、開いたドアの向こう側に血液の入ったスピッツ(採血した検体を入れた試験管)を手に持った若い男性医師が立っていて、その人と目が合ったその瞬間、
『ナオフっ!!!!』
キスされた・・・・。
ドアの向こう側のその人の視線をビシビシと感じながら。
『・・・んンっ』
ドアが閉まったその瞬間にようやく唇が放された。
『ちょ、ちょっと、今、そこに』
「今日はとことんアピールしてやるって言っただろ?」
可笑しそうに笑った彼。
『確信犯?!』
「今日だけだからな。“伶菜は俺のもの”って公認アピールできるのはな。」
彼が愉快な気分のように見えるのは
多分私の気のせいじゃないと思う。



