おそらく、それはよくある
結婚の誓いを受けて、このふたりはめでたく夫婦となりました。
皆さん、おふたりへ祝福の拍手を・・・
というような内容だと思った
多分、ナオフミさんもそう思ったから
中川院長にダメとは言わなかったんだろう
でも、中川院長は
「日詠伶菜殿。出産大変だったそうだね。体調も回復されてきたようで良かった。心も体もその気になったら、いつでもまたウチの病院に臨床心理士として戻ってきて、日詠クンを支えてあげて下さい。」
『・・はい。ありがとうございます。』
私へ温かいメッセージを、そして、ナオフミさんに対しては
「日詠尚史殿。」
「・・・はい」
「キミにはこれまでの功績を称えるとともに、今後、産科部長への就任を要請します。」
「・・・はい?」
彼が思いっきり眉をしかめるようなほぼ辞令に近いメッセージを口にした。
「・・・・・」
「日詠クン、返事は?」
「・・・・・」
「遺伝相談スタッフルームも新設することになるかもしれないな~」
呆れて言葉を失っているのか、黙ったままのナオフミさんに、甘く囁く中川院長。
普段から患者さんと向き合う時間を大切にするナオフミさんが
管理業務とかでその時間を奪われることをすんなりと引き受けるとは思えない
「・・・詳しくは後程でよろしいでしょうか?」
『えっ?』
遺伝相談スタッフルームは以前からナオフミさんが設置して欲しいと要望していたもの
遺伝相談チームは現在のところ産科医師のナオフミさんと臨床心理士の私しか正式に在籍していないけれど
ゆくゆくは神経内科とか小児科などのスタッフなどの参画も進めていきたいらしく
診療科の垣根を越えてそれらのスタッフが気軽に集まる場所が欲しいと言っていたっけ
そんなナオフミさんとっては“渡りに船”って話だと思う
「待ってるよ。何時まででも。今日は伶菜さんの好物らしいフルーツ大福を用意してあるからな~。」
「今の時期は確か、青島みかん大福。」
「そうなんだよ。試食させてもらったらあまりにも美味くて、即購入したよ。」
「院長が、店頭に出向いてですか?!」
「当たり前だ。福本クンから店を聞いて今朝、ちゃんと行列に並んで。」
遺伝相談スタッフルームの設置の話よりも
もっと迷っている顔をしているナオフミさん。
まさかの青島みかん大福でもしかして院長の話を聴く気になった?!
わざわざ院長があの行列店に朝早くから並んで購入してきて下さったという気持ちは嬉しいというか、なんだか申し訳ないけれど
それにしてもナオフミさんは
産科部長の話どうするんだろう?
「・・・伶菜、どうする?」
『えっ?あたし???』



