「そう。あたしの腕の見せどころ♪さあ、やるわよ~。ここ、座って。」
ベッドサイドに置かれている照頭台の前にある椅子に座るように促され、そこに腰掛けると、目の前にメイクボックスが置かれた。
そして、谷本さんの手でメイクボックスの蓋を開けられると、
「花嫁さん、アー、ユー、ハッピィ~?」
その中に貼り付けられていた鏡にマリアベールを被った私の顔と
鏡越しに私の様子を窺いながら微笑んでくれた谷本さんが小さく映った。
マリアベールを被った自分が
自分でないように見えて
『えへへっ・・』
照れくさい
「も~う、照れている場合じゃないでしょ?・・・・Are you happy?」
『い・・イエス。』
「よし、始めよか。」
『なんかよくわからないけれど・・・よろしくお願いします。』
「あっ、まずはメイク落とさないとね。」
谷本さんは電動ベッドを壁から少し離し、リモコンでベッドのマットレスの頭の部分を少し上げた。
「とりあえずベールを外して、ここに横になってね。」
彼女にそう促された私は言われるがまま、ベッドに横になった。
彼女はというと、ベッドと壁の間に入り込み、頭上から私を見下ろした。
「見下ろしちゃってゴメン~」
『いえ。よろしくお願いします。』
「はいね~。」
谷本さんは早速、メイク落としが入った瓶を手に取り、コットンにその液を浸み込ませ、それをそっと私の頬に当てた。
頬の上をすうっと撫でるように動かされるコットン。
ひんやりとした感覚が谷本さんの指の温度で徐々にぽかぽかとしてきて気持ちよく感じる。
その後、彼女がとてもいい香りがするクリームでマッサージをしてくれたおかげで、ココロも体もリラックスし、しばらくの間うとうとしてしまった。
「ふふっ、おはよ。肌の色、良くなってきたよ!」
『すみません、凄く気持ちよくて、うとうとしてしまいました・・・』
「いつも授乳とかで忙しいだろうから、丁度よかったじゃん♪」
『・・・そう言って頂けるとありがたいです。』
「でもそろそろ、時間もなさそうだから、起きよう。」
『ハイ。』
私が起き上がると、谷本さんは再びクローゼットのほうに行き、そこで立ち止まった。
「じゃ~ん。コレ、伶菜さんの・・でしょ?」
彼女が振り返りながら手に持って掲げたものは
『あっ、ソレ・・・・私の・・』
以前、入江さんがプレゼントして下さったウエディングドレスだった。



