「今日は何時に帰ってくる?」

 「何時でもいいでしょ、そんなこと」

 「そ、そうだよね… 変な質問してごめん。」

 彼女は大きくためいきをつき家を出た。

 「やっぱこのままじゃいけないよな」  
  
 さっき僕は幸せな生活を送っていると言ったけど、それは少し間違っている。

 最近の彼女はどこかそっけなく、苛立ちや焦りがうかがえる。

 原因はやはり、今のご時世によるものだろう。

 世界的な経済不況。彼女が務める会社は世界に羽ばたく大きな会社だ。

 自分が働く会社は小規模なため、彼女の会社よりは全然影響は少ない。

 それでも自分の会社にもどれなりのダメージはあった。

 僕の会社の何倍、いや何十倍、何百倍、何千倍、何万倍も大きな経済活動が行われていた彼女の会社のダメージは計り知れない。

 そんな会社の重役を担う彼女の仕事は想像を絶するほどのものだろう。