部活に、授業に友達関係。

朝7時に家を出て、帰ってくるのは午後5時すぎ。

高校生はストレスがたまる。
高校進学率も大学進学率もあがって、学生生活が長くなって、ストレスの捌け口なんてどこにもなくて……

私は心の貯金を崩しながら毎日を生きている。

「おはよ、真里奈!今日も部活一緒に行こうね!」

後ろからすごい勢いで挨拶をしてきたのはテニス部仲間の愛環。愛環は、明るくて朗らかで、皆から好かれている。

一言でいえば私の好きな人。

高校一年生の入学式で出会って、そのまま同じ部活に入って、2年になっても仲良くしてくれて。

同性を好きになったのは初めてで、自分を気持ち悪いと考えた事がある。
出来るなら、この思いなんて捨ててしまいたかった。
いっそ嫌いになってしまいたかった。
だから、嫌われたら好きな気持ちをなくせると思ったのに…

「ごめん…愛環のこと好きになっちゃって…女の子を好きになるのって気持ち悪いよね。ごめんね」

一ヶ月前私は愛環に告白した。当然振られると思った。気持ち悪いって、近づかないでって拒絶してもらおうと思ったのに…

「別に好きになるのに気持ち悪いとかなくない?真里奈は今私に好きって言ってくれたでしょ?私も同じ気持ち。愛環が女の子は女の子を好きになったら気持ち悪いって言ったら、私も気持ち悪い人間になるよ。自分の好きな人に気持ち悪いって思われたくないから、そんなこと言わないで?」

告白が成功してしまった。両思いってやつになった。





奇跡から1ヶ月、私は毎日幸せだった。

男と女が付き合うのが普通の世界で、私は普通とは違う私だけの普通の世界を生きている。

愛環に普通じゃないことを受け入れて貰えて、嬉しかった。今の私は無敵だ。
世の中の普通は普通じゃない。
私の普通は愛環と付き合って、愛環の幸せを願うことだから。