「谷本はるひ」

「谷本、はるひさん」

「何で繰り返したん」

そこから繰り広げられていく会話に楽しさを覚えた。こんなに人との会話が楽しいと思えたのは、いつぶりの話だろう。正直覚えてはいない。
後から聞いて行けば、私の四個上の二十歳。大学生で、血液型はA型。誕生日は九月十一日。次々と分かる事実に、嬉しさが溢れる。私だけが今、この人の瞳に映っている優越感。

「私も誕生日、九月なんです!」

「何日なん?」

「十二日です!」

「一日違いなんや」

「はい!」

誕生日を聞いて一人、運命を感じちゃってたのは秘密の話。ここにきて、彼と話をするのがいつの間にか私の日課になっていた。

私の足はまたあの芝生に進んでいく。あの日から放課後に会うこの時間がとても楽しみで仕方がなかった。彼のことも段々分かってきたつもりなのに。それなのに…

「あんまり近づかんといて」

「なんでですか!?」

「そこまで仲良くないのに何言ってん」

距離を置かれている。私、これでもかって言うほど頑張って来たんだけど、なんて。どうしたら私は仲良くなれるんだろうね。


「え、はたち?」

「うん」

「それさ、年上ってこと?」

「そういうこと」

「どういう人なの?」

私の友達、莉奈。こういう時に際どい質問をしてくるわけで。あの人は一言だけでは表せない。だって、まだ三日しか経ってない。それなのに、どういう人なの、なんて質問に答えられるわけないよね。

「アウト」

「え、アウト?」

彼って、どういう人なんだろうか…。