灰谷くんは本当に気さくな人だった。
わたしはただ返事をするので精いっぱいだったけど。
灰谷くんがずっと話題を振ってくれたので、美術室に着くまで会話が途切れることはなかった。
「そう言えば、文化祭の班一緒だね」
「うん、そうだね。転校初日から文化祭の話で驚かなかった?」
「それは少しね。前にいた学校は秋に文化祭やってたから。この学校はこの時期にやるんだね」
灰谷くんは話題が途切れないように、一生懸命話題を考えてくれているのかな。
話題の振り方が決して下手なわけではないけど。
なんとなく、そう感じてしまった。
もしかしたら、灰谷くんは本当は口数が少ない人なんじゃないかって。
でも、この灰谷くんとの出会いは、部活動でのわたしの立場を変えていくことになる。


