佐藤さんは「初めてのBL作品が私の?」と、照れくさそうに笑った。



「野々村さんって美術部だよね?」


漫画を読んでいると、ふいに佐藤さんが聞いてきた。

わたしの部活動が何なのか、知っている人なんていないと思っていたから。

たったそれだけのことが、うれしかった。


「うん、そうだけど……」

「あのね。私の漫画、手伝ってくれないかな?」

「え?わたしが?」

「うん。実は新人賞に応募しようと思ってるんだけど、一人だと時間がかかって去年間に合わなかったんだ。もしよかったら、手伝ってくれると助かるんだけど」

「わたしでよければ……でも、わたし、漫画描けないよ」


漫画を描いたことはなかったけれど、頼まれたことがうれしくて即答していた。


「大丈夫。べた塗り……黒で塗りつぶすんだけど、その作業をしてもらいたいなって」

「黒で塗りつぶすだけなら……」