でも、大丈夫。
スマホの画面に映し出された彼の名前を思い出して、わたしはこぶしを握った。
「あのね……」
「私をバカにしに来たの?」
「え?」
彼女の声は想像以上に冷たかった。
昨日の彼女もそうだったけれど、自分の漫画を見られたことに対して、何かトラウマでもあるかのようだ。
「あのね……」
「バカにしに来たのなら、出てって」
「違うの!」
自分でも驚くくらいの、大きな声が出た。
それは目の前の佐藤さんも同じだったようで、目を丸くして驚いている。
「わたし、佐藤さんの漫画、バカにしてない……」
今日、初めてまともに佐藤さんと目が合った気がする。
わたしを見つめて、彼女は次の言葉を待っていた。
「わたしね、昨日も“とてもきれいな絵だね”って言おうとしただけなの」
「え?」
「誤解させちゃったみたいでごめんね」


