ラインの友達に表示される翔哉くんの名前を見ると、勇気が湧いてくる。
最近、一歩踏み出す勇気の源は翔哉くんなのかもしれない。
この日もわたしは、勇気をもらっていた。
「希美、今日うちら遊びに行くけど、一緒に行かない?」
「ごめん、今日も用事あるから」
「希美、いつも忙しそうだよね」
「ごめんね。また誘って」
放課後に教室ではこんな会話が繰り広げられていた。
この前のことがあったから、どうしても会話の中心である佐藤さんを目で追ってしまう。
それに、わたしは彼女に伝えたいことがある。
今朝からずっとそのタイミングを見計らっているのだけれど……
一向にそのタイミングは現れず、気づけば放課後になってしまった。
結局カバンを持って教室を出てしまった彼女に、話しかけることはできなかった。


