「翔哉くん、今日は本当にありがとう。すぐにお礼言えなくてごめんね」
これ以上勉強の邪魔をしないようにと、すぐに立ち去ろうと思った。
でも、彼によってそれは阻止されてしまう。
「あ、ちょっと待って」
呼び止められたわたしは、その場に立ち止まって、静かに彼の様子をうかがった。
翔哉くんはルーズリーフを1枚取り出して、何かを書いているようだった。
そして、それをわたしにぶっきらぼうに突き出してくる。
「え?」
「それ、俺のラインのIDだから。学校で伝えたいことがあったら……その……使っていいから」
だんだんと細くなっていく声は、しっかりわたしの耳に届いた。
受け取ったルーズリーフの上の方に、男の子っぽい字でIDが書かれている。


