「あんたがウジウジしてたから、思わず口挟んでた。イライラ済んだよね、ああいうの」
翔哉くんは優しく助けてくれたと思ったら、こうして突き放す言葉も言う。
彼のそっけない態度は変わらないまま、問題を1問だけ解いていた。
でも……
「あ……」
「なに?」
「その答え、間違ってるよ」
「え?」
「それは仮定法だから、動詞の形は過去形にしないと」
思わず言ってしまったけれど、彼は固まったまま動かない。
もしかして、出しゃばりすぎてしまったかな。
わたしごときがって怒られてしまいそう。
「さすが、野々村さん。頭いいね」
今度はわたしを名前で呼んでくれた翔哉くん。
だけど、わたしは少し寂しさを感じた。


