「すず」


空手着を持ちながら、翔哉くんが教室を出る前にわたしを呼び止める。


「どうしたの?」

「今日は先に帰るなよ」

「え――?」


どういうこと?今日は先に帰るなって……

翔哉くんの家でお世話になっていた時は、確かに送り迎えをしてもらっていた。


でも、今は――


「何も言わずに先に帰ったから。昨日、スマホのバッテリーなくて学校中探しまわったし」

「あ、ごめん…………また一緒に帰ってくれるの?」

「何言ってんの。約束したじゃん」


わたしはてっきりもう一緒に帰れないんだと思ってた。

でも、翔哉くんはこれからも今まで通りだと思っていてくれたってこと?


嬉しくてふふっと笑ってしまうと、翔哉くんが「うれしそうだな」とつぶやいた。