翔哉くんはおもむろにその漫画に手を伸ばす。
自分の少女漫画を持っている翔哉くんを、彼女は不審そうに見ていた。
「キモ。こんなんがいいんだ」
パラパラと漫画をめくる翔哉くんが、顔をしかめてつぶやいた。
翔哉くん……いったいなにを……
「なによ。女の子なら憧れるシチュエーションが詰まってるのよ。全女子高生の憧れなんだから」
「へえ、憧れねえ……これが」
まるでバカにしたような翔哉くんが、漫画を雑に持っている。
周りも息をのんで、翔哉くんに注目していた。
「実際にこんなこと言う男いるわけねーじゃん」
翔哉くんはあるページを開いていた。
きっとそのページにはイケメン男子のキザなセリフが書かれているのだろう。
「いいじゃない。漫画の世界なんだから」
「へえ……」


