「うわ……佐藤さん、こんなの描いてんの?」
「キモ……」
口を開けば、のんちゃんを非難する声ばかり。
誰ものんちゃんの絵をほめる人はいなかった。
「希美、こういうのが趣味だったんだ」
ひとりの女子が、漫画を受け取ってバカにしたように言った。
確か、あの子……
新学期が始まったころ、のんちゃんに一番くっついていた子だ。
「こんなキモいのよく描けんね。男同士とかマジあり得ない」
その子は見下したように言うと、漫画を顔のところまで持ち上げて……
あろうことか、漫画をビリビリ破いたのだ。
のんちゃんが一生懸命描いた漫画を――
「ちょっと――!」
無残にも床に散っていく漫画のかけらたち。
わたしは床にしゃがんで、そのかけらをひとつ拾った。


