同居人は無口でクールな彼




「ちょっと見せてよ」


ひとりの子がのんちゃんが抱えている漫画を奪う。


「ちょ…………っ」


のんちゃんが抵抗する間もなく、漫画はその子に手に渡って――

その子の周りには、のんちゃんの漫画見たさにさらに人が集まってくる。


「のんちゃん……」


わたしと灰谷くんは慌ててのんちゃんに駆け寄ったけれど……

のんちゃんの瞳には涙が光っていた。


ずっとのんちゃんが隠してきたもの。

せっかくわたしたちには、その秘密を打ち明けてくれたのに。


こんなにも一瞬で壊れてしまうなんて。


「なに、これ……BLじゃん」


漫画を持った子の一言で、さらに教室がざわつく。

クラスの女子の間で流行っているのは、実写化もされるような少女漫画ばかり。

漫画を覗き込みながら、顔をしかめるクラスメイトばかりだった。