睨み付けるように去っていく翔哉くんを、わたしたちはただ見つめていた。
灰谷くんはあっけにとられた様子で、振り払われた手はそのまま動かさない。
そして――
「よかったね、鈴香ちゃん。篠原くんのあれね、嫉妬してるんだよ」
笑いながら、そう教えてくれた。
そして、この日のお昼に事件は起こったのだ。
「ねえ、講習の時の昼休みってなんでこんなに長いの?」
「知らない。先生の都合じゃないの」
「1時間あるもんね。普段もそれくらいあればいいのに」
「えー、私はいらないかな。早く放課後になってほしいもん」
夏休み期間の講習の日程が先日配られた。
その用紙には5時間時間割と昼休みの時間が記載されていて……
始まる時間が少し遅いにも関わらず、昼休みも通常より長いというオプション付きだった。


