彼の耳元で、こう聞いてみた。
「男の子って異性の友達にも、好きかもしれないって普通に言うの?」
灰谷くんは驚いた顔をしていたけれど、すぐに察知してくれたみたい。
ふっと、笑ってくれたけど、その顔はどこか悲しそうだった。
「篠原くんに言われたの?鈴香ちゃん」
「えっと、その……っ」
「わかりやすいなあ、鈴香ちゃんは」
灰谷くんはそっと手を伸ばして、わたしの頭をなでた。
でもその手は、なにかに阻まれてすぐに離れていく。
「あ……」
焦ったような灰谷くんの声が聞こえて、顔を上げてみると……
そこには、しかめっ面の翔哉くんが、灰谷くんの手をつかんでいた。
そして――
「触んな」
明らかに怒った声の翔哉くんは、灰谷くんの手を乱暴に振り払った。


