どうして、わたしはあの時はっきり“好き”だと言わなかったのだろう。
あの時は“好きかもしれない”と答えるだけで精一杯だった。
“かもしれない”じゃない。
わたしの気持ちはもう決まっていたのに。
「ねえ、鈴香ちゃん最近どうしたの?」
「篠原くんと何かあった?」
休み時間に翔哉くんがトイレに言っている間。
のんちゃんと灰谷くんが心配そうに声をかけてくれた。
そう……
あれからわたしは、まともに翔哉くんと話ができていない。
「えっと……」
誰に聞かれるかわからないこの状況で話しなんて出来なかった。
出来れば誰にも聞かれたくなくて、こっそりとのんちゃんだけに耳打ちをした。