車の中に、お母さんたちの声が響く。
昔話に花を咲かせたお母さんたちは、目的地に到着するまでずっと話し続けていた。
わたしたちは、後ろでただ静かにしているだけ。
翔哉くんに至っては、途中から目を閉じて寝る体勢に入っていた。
「翔哉くん、着いたよ」
駐車場に車を停めて、わたしはすぐに眠っている翔哉くんに声をかけた。
時々翔哉くんはリビングでお昼寝をしているときがある。
その時はなかなか起きないから、今回もそうだろうと思ったのだけれど……
「うわ!……ビックリした」
すぐに飛び起きた翔哉くんは、ドアを思い切り開けたのだ。
それに驚いて、思わず声が漏れた。
「鈴香、なにしてるの。早く車から降りて」
「あ、うん……」
いつの間にか翔哉くんは先に車を降りていて、車内にはわたしだけ。
お母さんに急かされて慌てて飛び降りた。


