慌ててカバンを持つと、のんちゃんと灰谷くんが唖然とした表情でわたしを見ていた。


「篠原って鈴香ちゃんのこと、すずって呼んでるの」

「うん……」


実際に呼ばれたのはこれで2回目だけどね。

でも、どうして翔哉くんはまたそう呼んでくれたんだろう。


「俺もそう呼ぼうかな」

「灰谷、篠原に殺されるよ」

「それはダメだな。まずは仲良くならないと」

「道のりは遠そうね」


確かにとうなづいて、わたしは2人に別れを告げた。

いつの間にか翔哉くんの姿は見えなくなっていて、慌てて追いかけた。


「翔哉くん……!」


翔哉くんは下駄箱のところで、しっかり待っていてくれた。


「おまたせ」

「…………ん」