だから、今日は希美ちゃんのお手伝いに、いつもの空き教室にやってきた。
「ねえ、ところで鈴香ちゃん。さっきから、廊下でおいでおいでしてるよ」
「え?」
何のことかと思って廊下の方を見てみると、教室の前のドアの前で、わたしに手を振っている人がいた。
あの転校生の灰谷くんだ。
でも、わたしに向かって手を振っているとは限らない。
教室では希美ちゃんと話しているところをよく見るから、希美ちゃんにかも。
「早く行ってあげたら?飼い主待ってるわんちゃんみたいだよ、灰谷」
「あ、うん」
希美ちゃんに言われて、本当にわたしなのか疑問を抱きながら、近づいていく。
「灰谷くん、わたしのこと呼んだ?」
「あー、うん」
「どうしたの?」


