「おい井出、もう終わりか?」
「この野郎……」
激しく動いても汗ひとつかかずに涼しい顔をしている冬馬。
井出くんは……息を切らして汗を必死に拭っている。
いつのまにか怖さは薄れて来て微笑ましくすら感じるよ。
冬馬って強いんだね。
でも強いのに決して手は出さないなんて、私の知ってる冬馬のままでいてくれて嬉しい。
「お前は何者だよ!普通じゃねーだろ」
「あんま言いたくなかったんだけど……中学空手全国大会で準優勝した経験あるだけ。」
それは私も知らなかった……。
どうりでこんなに……。
「お、覚えとけよバーカ!」
「まんまザコキャラのセリフだな……」
手を下さずに堂々と立ち尽くす冬馬にビックリしたのかな?
井出くんは走っていなくなっちゃった。
お互い怪我しなくて良かったよ。
私は胸をなでおろす。
「……アキ。奴に何もされなかったか?」
「うん……大丈夫だよ。少ししつこくて困ってただけで」
本当にかっこよかった。
冬馬にときめいたのはもう何度目か分からない。
