「冬馬……」
「大丈夫だよアキ、ちょっと離れてろ」
冬馬の真剣な顔に思わず頷いて後退りをしながら距離をとる私。
冬馬が殴られるのも……殴るのも見たくない。
でも多分、冬馬は暴力なんてしない。
昔もいじめられてた同級生を助けに入ってたなあ、冷たいけど本当は熱血漢なんだよね。
「後悔すんなよ滝口?俺は喧嘩強いぞ」
「それは楽しみだ。強そうにも場慣れしてるようにも見えないけどな」
井出くんは顔真っ赤にして怒ってる。
二人に何があったんだろ……。
「いくぞ!滝口ぃぃ!!」
井出くんは威勢の良い事を口にしながら振りかぶった。
思わず私は「きゃっ!」と言いながら目を閉じる事しか出来なかった。
平気でこんな事するなんてやっぱり井出くんのこと好きになれそうにない。
「あれ?あれ?」
「どうした?ちゃんと狙えよ」
恐る恐る目を開けると私は驚いた。
何度も殴りかかる井出くんの攻撃を冬馬は軽く避けたり流したり……なんか大人が子供の戯れる相手をしてあげてるみたい。
