「じゃあ俺この辺で帰るわ」
沈黙を破ったのは冬馬からだった。
私の家がすぐ近くのところまで来た段階でそう言った。
楽しい時間ほど過ぎるのが早いもので名残惜しい……けど私は逆らう事はしない。
それに家の場所覚えててくれたのかな。
嬉しい。
「うん、ありがとう!……また明日ね」
「ああ!こちらこそサンキュ!」
冬馬の手が離れる。
なんか寂しい。誰かに触れるってこんなに暖かかったんだ……
「……なんだ寂しいか?」
「そ、そんなわけないでしょ!遅くなるから早く帰りなよ!」
相変わらずの言い方。
やっぱり冬馬には見透かされてる……。
私が素直になんかなれるわけもなく否定しかできなくて辛い。
「じゃあまた学校でな?」
「気をつけて帰ってね!時間も遅いし……」
冬馬は背中を向けて走り出した。
もう一度「ありがとう」と言うと、聞こえていたようで背中を見せたまま片腕を上げていた。
