せいぜい2,3ヶ月だったけど、少年を青年に成長させるには十分な時間だったのだろうか。林渡くんの顔はとても落ち着いていて、どこか大人の雰囲気も感じる。ーいや、もしかしたら、変わったのは彼ではなく…。
「できたよ」
そう言って、林渡くんがお皿を持ってくる。お皿の上には彩響が好きなものがキレイに並んでいて、とても美味しそうに見えた。早速フォークを手に取り、お皿の上の卵焼きを口に運ぶ。程よい甘さに幸せを感じていた頃、横に座っていた林渡くんが質問した。
「学校、入学申し込みしたんだって?」
「あ、うん。すごい、今日出してきたのにもう分かったの?」
「俺、学校に知り合い多いから。すぐ話聞いただけ」
「そう。まあ…ギリギリだったけど、なんとか間に合った。…ありがとね、わざわざ気を使ってくれて」
「いや、俺なにもやってないから」
「そんなことないよ」
そう、決してそんなことはない。
林渡くんがいてくれたおかげで、自分の人生をもう一回考え直すようになった。
ただ母の言いなりしかならなかった自分に、やっとさよならすることができた。
この感謝の気持ちは、どれだけ言っても足りない。
「俺の後輩になったこと、歓迎するよ、彩響ちゃん。大変だろうけど、きっと上手く行くよ。大丈夫、時間はこれからも沢山ある。俺もずっと隣で支えるから。焦らず一つ一つやっていこう。今までできなかった分も、含めて」
その言葉に、彩響は今までの出来事を振り返る。そう、自分はもう30歳だけど、まだ30歳でもある。まだ時間はある。今まで涙を流した分、これからは沢山笑おう。
感謝の気持ちも、これからじっくり、ゆっくり、丁寧に。そう伝えていきたい。
「…あのさ、彩響ちゃん」
何か気まずそうに、林渡くんが話を切り出す。一瞬手を止め顔を見ると、なんだか顔が赤くなっているようにも見える。視線を固定できず、結構長い時間何かを悩んでいるようだった彼がやっと話を続けた。
「俺たち、お互い家族のことで悩むことが多かったよね」
「うん。そうだね」
「でさ、これから、その…」
なにを言いたいのか、林渡くんはもじもじして、なかなか言えない。彩響はフォークを止めたまま、そんな彼の顔を見つめた。一体この会話はどこへ向かっているのか?しばらくして、何か決心したかのように林渡くんの顔が真剣になる。
「その、だから、将来は俺が彩響ちゃんの家族になってあげたいと思う…けど」
一瞬なにを言っているのか、よく分からなかった。しかし、徐々にその意味が伝わってくる。もしかしたら、いや…この真っ赤な顔は間違いない。彩響は目を丸くしたまま、聞いた。
「これって、もしかしてプロポーズなの?」
「…そう」
林渡くんは目線をそらさず、はっきり返事した。いつものように茶化しているのかと思ったら、どうやら本気らしい。真っ赤な顔とそわそわしている姿がとても可愛く、そして同時に嬉しいと思った。本気でぶつかってくるその気持ちが胸を震わせる。
「これを言いたくて、ここに来た。明日出発するまでにどうしても言いたくて。俺はまだ頼りないし、ただのクソガキにしか思えないかもしれないけど…彩響ちゃんを思う気持ちは、誰にも負けない」
相手は9歳も年下で、まだまだ若い学生。
一瞬、母がこの風景を見たらなにを言い出すか、考える。それと同時に、また笑ってしまう。未だに母のことを先に考えてしまう癖を消せずにいる。
母のことはもうどうでもいい。
ただ素直になればいいんんだ。自分がどうしたいのか、どうしていきたいのか。
だって、自分の人生は、自分のものだから!
「そうだね…」
彩響はニコニコ笑いながら、頬杖をつく。こんな林渡くんを見るのが楽しくて仕方がない。それと同時に、徐々に伝わってくる胸の温かさを感じる。プライドとか、そういうのを全部捨てて、素直になろう。自分は間違いなく惹かれているんだ。とても生意気で、うるさくて、でも…実は優しい、この人に。
「どうしようかな〜今そんなこと言われても困るだけなんだけど。私、これから色々やることあるし、あなたも遠くへ行っちゃうし」
彩響の言葉にがっかりした林渡くんが雨に濡れた子犬のように肩を落とす。彩響はくすくす笑いながら話を続けた。
「でも、だからこそ私、これから少なくとも5年は誰とも結婚しないつもりなんだよね」
「…?」
「だから、5年あげる。その間に立派な男になって、もう一回プロポーズして。待ってるから」
最初目を大きく開けた林渡くんの顔が徐々に笑顔に変わり、大きい声で「うん!!」と答える。その顔を見て彩響も一緒に笑った。そしてすぐー
ーちゅ。
ほっぺに何か柔らかいものが触れる。驚いて目を丸くする彩響に、林渡くんが大きい声で叫んだ。
「待ってろよ、彩響。5年以内に誰もが振り向くような格好いい男になって、あんたにプロポーズする。覚えてろよ!」
ああ、元家政夫さんはどこまで可愛くなるつもりだろうか。いや、こういう姿が可愛いと思う時点でもう自分も惚れているんだろうな。彩響大きく頷いた。
「うん、待ってる。楽しみだね!」
<オスの家政婦、拾いました。〜料理のガキ編〜終わり>
「できたよ」
そう言って、林渡くんがお皿を持ってくる。お皿の上には彩響が好きなものがキレイに並んでいて、とても美味しそうに見えた。早速フォークを手に取り、お皿の上の卵焼きを口に運ぶ。程よい甘さに幸せを感じていた頃、横に座っていた林渡くんが質問した。
「学校、入学申し込みしたんだって?」
「あ、うん。すごい、今日出してきたのにもう分かったの?」
「俺、学校に知り合い多いから。すぐ話聞いただけ」
「そう。まあ…ギリギリだったけど、なんとか間に合った。…ありがとね、わざわざ気を使ってくれて」
「いや、俺なにもやってないから」
「そんなことないよ」
そう、決してそんなことはない。
林渡くんがいてくれたおかげで、自分の人生をもう一回考え直すようになった。
ただ母の言いなりしかならなかった自分に、やっとさよならすることができた。
この感謝の気持ちは、どれだけ言っても足りない。
「俺の後輩になったこと、歓迎するよ、彩響ちゃん。大変だろうけど、きっと上手く行くよ。大丈夫、時間はこれからも沢山ある。俺もずっと隣で支えるから。焦らず一つ一つやっていこう。今までできなかった分も、含めて」
その言葉に、彩響は今までの出来事を振り返る。そう、自分はもう30歳だけど、まだ30歳でもある。まだ時間はある。今まで涙を流した分、これからは沢山笑おう。
感謝の気持ちも、これからじっくり、ゆっくり、丁寧に。そう伝えていきたい。
「…あのさ、彩響ちゃん」
何か気まずそうに、林渡くんが話を切り出す。一瞬手を止め顔を見ると、なんだか顔が赤くなっているようにも見える。視線を固定できず、結構長い時間何かを悩んでいるようだった彼がやっと話を続けた。
「俺たち、お互い家族のことで悩むことが多かったよね」
「うん。そうだね」
「でさ、これから、その…」
なにを言いたいのか、林渡くんはもじもじして、なかなか言えない。彩響はフォークを止めたまま、そんな彼の顔を見つめた。一体この会話はどこへ向かっているのか?しばらくして、何か決心したかのように林渡くんの顔が真剣になる。
「その、だから、将来は俺が彩響ちゃんの家族になってあげたいと思う…けど」
一瞬なにを言っているのか、よく分からなかった。しかし、徐々にその意味が伝わってくる。もしかしたら、いや…この真っ赤な顔は間違いない。彩響は目を丸くしたまま、聞いた。
「これって、もしかしてプロポーズなの?」
「…そう」
林渡くんは目線をそらさず、はっきり返事した。いつものように茶化しているのかと思ったら、どうやら本気らしい。真っ赤な顔とそわそわしている姿がとても可愛く、そして同時に嬉しいと思った。本気でぶつかってくるその気持ちが胸を震わせる。
「これを言いたくて、ここに来た。明日出発するまでにどうしても言いたくて。俺はまだ頼りないし、ただのクソガキにしか思えないかもしれないけど…彩響ちゃんを思う気持ちは、誰にも負けない」
相手は9歳も年下で、まだまだ若い学生。
一瞬、母がこの風景を見たらなにを言い出すか、考える。それと同時に、また笑ってしまう。未だに母のことを先に考えてしまう癖を消せずにいる。
母のことはもうどうでもいい。
ただ素直になればいいんんだ。自分がどうしたいのか、どうしていきたいのか。
だって、自分の人生は、自分のものだから!
「そうだね…」
彩響はニコニコ笑いながら、頬杖をつく。こんな林渡くんを見るのが楽しくて仕方がない。それと同時に、徐々に伝わってくる胸の温かさを感じる。プライドとか、そういうのを全部捨てて、素直になろう。自分は間違いなく惹かれているんだ。とても生意気で、うるさくて、でも…実は優しい、この人に。
「どうしようかな〜今そんなこと言われても困るだけなんだけど。私、これから色々やることあるし、あなたも遠くへ行っちゃうし」
彩響の言葉にがっかりした林渡くんが雨に濡れた子犬のように肩を落とす。彩響はくすくす笑いながら話を続けた。
「でも、だからこそ私、これから少なくとも5年は誰とも結婚しないつもりなんだよね」
「…?」
「だから、5年あげる。その間に立派な男になって、もう一回プロポーズして。待ってるから」
最初目を大きく開けた林渡くんの顔が徐々に笑顔に変わり、大きい声で「うん!!」と答える。その顔を見て彩響も一緒に笑った。そしてすぐー
ーちゅ。
ほっぺに何か柔らかいものが触れる。驚いて目を丸くする彩響に、林渡くんが大きい声で叫んだ。
「待ってろよ、彩響。5年以内に誰もが振り向くような格好いい男になって、あんたにプロポーズする。覚えてろよ!」
ああ、元家政夫さんはどこまで可愛くなるつもりだろうか。いや、こういう姿が可愛いと思う時点でもう自分も惚れているんだろうな。彩響大きく頷いた。
「うん、待ってる。楽しみだね!」
<オスの家政婦、拾いました。〜料理のガキ編〜終わり>



