今は通信の会社を経営している。

通信と言ってもコンピューターがどうのこうのと言うわけではなく、プリンターや通信機器の営業会社だ。

営業社員を3人と、テレホンアポインターが4人、それと事務員の8人の小さな会社だ。

それでも啓太には信念があった。

家族のような会社。

毎日が楽しいと思える会社。

そんな夢のような会社を造りたいと思い立ち上げたのだ。

16畳の真四角のオフィス。

玄関を開けるとオフィスが丸見えになるのを嫌って、パーテーションで目隠しをしている。

入って左側に事務員の机、右側にアポインターさんの長机。

センターに社員の机があり、その正面に啓太の机がある。

その頭上には経営理念が立派な額縁に収められている。

啓太は右腕のロレックスに目を向ける。

「朝礼!」

時刻は9:00。

すでに啓太の顔から笑みは消えていた。

いや、もともと笑みなどなかった。

それは啓太の机の隣りにあるホワイトボードが物語っていた。

目標売上に対して、達成率60%。

利益どころか支払いさえままならない数字だった。

「折本!なんだこの数字は?」

啓太の激が飛ぶ。

責任者の折本は言葉を詰まらせる。

「あの、その、、、」言葉にならない言葉を発しながら、額をハンカチで拭った。

薄い頭部がペタッと張り付いた。

折本は啓太の一回り年上だったが、まるで子供のように小さくなっていた。