天気のいい日には、二人でマンハッタンの街並みを歩いた。

 九条くんのマンションは5番街沿いに立っていて、その目の前には静かな雰囲気の公園がある。

「ブライアント公園って言うんだ。ここも素敵だけど」

 九条くんは、おのぼりの私に優しく教えてくれる。

「北に向かって歩けば、セントラルパークがあるよ。途中、大きな教会やロックフェラーセンターもあるし、お洒落なお店もたくさんあるから」

 銀座や六本木デートみたいなものだよね。
 
 九条くんと二人、並んで歩けるだけで、私はうきうきして、舞い上がってしまう。

 九条くんは普段はラフな格好が好きみたいで、黒いハイネックのアンダーに白いシャツををゆったり着崩して、デニムのボトムを合わせたりする。
 でも、さり気なく身につけたシルバーのネックレスや腕時計が、隠し切れないハイセンスさを醸し出していて──、

 とにかく、かっこいい。

 私は、シンプルなベージュのニットと膝丈のスカートの組み合わせ。
 というより、まさかこんな展開を予想していなくて、可愛いデート用の服なんて持って来ていない。

 鏡の前でいつまでも唸っている私に、九条くんは、

「どんな格好でも、胸を張って、前を向いて歩いていればいいんだよ。ニューヨークって、そういう街だから」 

 そう言って、後ろからハグしてくれた。