出発ロビーの片隅で、私は声を立てずに泣いていた。
 もう、涙を拭う気もない。悲しみが涙に変わって流れるなら、涸れ果てるまで泣いてしまいたい。

 初めてここに降り立ったとき、私は一人で泣いていた。
 そしてまた、この広い空港で一人で泣いている。
 すべてが元に戻っただけ。
 ただ、それだけ。

 深夜3時半の出発ロビー。
 乗客たちは皆眠たげで、口数も少なかった。
 長椅子の隅で肩を震わせる、私を気にとめる人は誰もいない。

 掲示板に、私の乗る便の搭乗手続きの開始が表示された。

 青いキャリーバックを引いて、私はゲートに向かう出発客の列に並んだ。
 できるだけ後ろを振り返らないように、自分を励ましながら。