ドラッグストア風の店舗の一角にコーヒースタンドがあるのを見つけて、青い目の店員にコーヒーを一杯注文した。

 紙コップに注がれた熱いコーヒーを吹きながら、ゆっくり口に含むと、鼻をくすぐるコーヒーの香りと共に、ちょっとだけ元気が戻って来る。
 ゆっくり、少しづつ、時間をかけて飲み干した。

 紙コップが空になっても、まだ真理からのメールは来ていなかった。
 コップをダストボックスに押し込んで、ロビーの脇に連なった、長椅子の列の片隅に腰掛けた。

 ニューヨーク時間、午後9時。

 空港の明かりは眩しくて、行き交う人の波も途切れはしないけど、初めての街で一人放り出されたようなシチュエーションに、どうしても心が後ろ向きになってくる。

 自分で自分の肩を抱いて、固く目を閉じた。
 
 この人々のさざめきの中で、自分の周囲だけ、時が止まったように感じる。

 ふいに田村部長の言葉が、耳元に甦った。