窓の外には、黒い緞帳(どんちょう)にスワロフスキーのクリスタルを散りばめたような光景が広がっていた。
 
 (きら)めきの街、ニューヨーク。
 
 眩い光の洪水に目を細めながら、ふいに小学生の頃に見た、プラネタリウムの輝きを思い出していた。

「きれいだったな」
 
 言葉に出して(つぶや)いていた。
 ニューヨークは、初めて訪れるのに。
 
 成田からニューヨークに向かう飛行機のエコノミー席で、浅い眠りを何度も繰り返して、ようやく機体はニューヨークのJ・F・ケネディ国際空港への着陸態勢に入っていた。
 機内の照明が落ちて、シートベルト着用のサインが赤く浮かび上がるなか、通路を隔てた三列席の親子連れの、まだ幼い女の子が、夢見るような面持ちで、窓の外に広がる光のパノラマに見入っていた。
 
 私もいつか、あんな無邪気な瞳で、どこかの街の(きら)めきを見つめていたはず。
 
 でも、今は──。

 地表の輝きがどんどん近付いてくる。
 軽く目を閉じ、シートに身を預けた。