九条くんとお父さんは、そのまま夜が更けるまで差し向かいで飲み続けて、気がついたら二人とも酔いつぶれて眠ってしまっていた。
「あらあら、しょうがないわねえ……」
お母さんはそう言いながら、大いびきをかいているお父さんに、掛け布団をかけてあげた。
「理恵。仏間にお布団を敷いておいたから、まあくんをお願いね」
えっと、私が九条くんを?
「花嫁になる人が何言ってるのよ。酔いつぶれた旦那さまの介抱も、妻の務めよ」
でも、こんなに背の高い九条くんを、小柄な私が運ぶなんて──。
「いつまでも甘えてるんじゃないの、しゃきっとなさい」
私は意を決して、九条くんの耳元に話かけた。
「まあくん、風邪引くよ。向こうにお布団敷いたから」
すると九条くんは、ぱっちり目を開けて、
「ありがとう、理恵。大丈夫、自分で歩けるよ」
「お、起きてたの?」
「いや、完全に酔いつぶれてたけど……俺はパイロットだから、名前を呼ばれると目がすぐ覚めるように、身体ができ上がってるみたい」
私もお母さんもいたく感心したのだけど、そう言いながら九条くんは、居間から仏間に移る際に鴨居にしたたかにおでこをぶつけて、しばらく唸りながらうずくまっていた。
そんなことがありながらも後片付けを終えて、私とお母さんは交代でお風呂に入った。
「お父さんとまあくんには、明日の朝にでも入ってもらいましょう」
お母さんはそう言って笑いながら、お風呂の火を落とした。
「理恵。お母さんも横になるから、まあくんを頼んだわよ」
「はい」
「仏間には仏壇があるんだから、仏さまの前でえっちなことしちゃ駄目よ」
「お、お母さん?!」
お母さんは笑いながら、二階の寝室に上がっていった。



