日が暮れる頃に真理と別れて、私は九条くんのマンションに戻った。
「真理ちゃんは元気だった?」
「うん。近々舞台もあるみたいで、張り切ってたよ」
ブロードウェイの舞台でスポットライトを浴びる。その夢を、真理は私とは違った足取りで、確かなものにしようとしている。
私は真理の近況報告と一緒に、カフェでの会話も九条くんに伝えた。
「そう……。真理ちゃんがそんなことを」
九条くんはくすりと笑った。
「やっぱり姉妹だね。ちょっと、羨ましいな。僕は兄弟がいないから」
私は静かにうなずいた。
系図上は、九条くんには兄弟にあたる人がいるはずだ。
瑠美おばさんの再婚相手のイヴンさんには、瑠美おばさん以外にも妻と呼ぶ女性が数人いる。イヴンさんとその妻たちとの間に生まれた子は、九条くんの義理の兄弟ということになるけど、九条くんはそんなシャキール家に関わる話を、ひどく嫌う。
私も極力、その話題には触れないように気を付けていた。
「そういえば、母さんから連絡があったよ」
九条くんが、私にふわふわの泡がたったカプチーノを勧めながら、言った。
「来月の中頃には日本に行けると思うって。だから僕らは一足先に日本に行って、母さんを待とう。できればその間に、理恵のご両親にもご挨拶をしておきたい」
「あの、そのことで──」
私は九条くんに、素直にお願いしてみた。
「父さんと母さんには、まだまあくんのこと話してないの。向こうに行く前に国際電話で説明するつもりだけど、その時ちょっとだけでいいから、まあくんも代わってくれないかな」



