遠く潮騒を感じて、目を覚ました。
うっすらと目を開けると、目の前に九条くんの黒い瞳があった。
私は軽く目を閉じて、自分からキスをねだった。
夜も白み始めているようだった。
軽いキスを交わしてから、九条くんが口を開いた。
「理恵、今から出かけない? 見せたいものがあるんだ」
まだ薄暗い道を走って、真っ赤なコンバーチブルが着いたのは、昨日波と潮風を存分に味わったマカプウだった。
私たちは車を降りて、マカプウ岬の端へ歩いて行った。
この岬は、オアフ島の東の端。
つまりこの島で、一番早く日が昇る場所。
「日の出だよ、理恵」
九条くんが黒髪を海風に遊ばせながら、言った。
岬の向こうは、水平線まで続く海。
その水平線に白く光が差して、赤く燃える太陽が、明け方の空をグラデーションに染め上げながら、少しづつ昇ってくる。
潮騒と海風と朝の光が織り成す、一大ページェントだった。
私は言葉を発するのを忘れたまま、次第に輝きを増す白い光に、包まれていた。
「理恵」
ふいに、九条くんが私を呼んだ。
気が付くと、九条くんは私の横でひざまずいていた。
「まあ、くん……?」
九条くんの捧げる手には、あのミッドタウンのジュエリーショップの、青い箱があった。
「理恵、俺と結婚してほしい」
箱の中の、プラチナリングに散りばめた小さなブルーダイヤたちが、昇って行く朝の光を浴びて、競い合うように煌めいていた。



