そして、夜──。
シャワーを浴びて、ドレッサーの前で髪を梳いてから、私は白いバスローブを羽織って、ベッドルームに入った。
待っていてくれた九条くんは、ベッドサイドのソファーから、静かに立ち上がった。
「理恵」
「まあくん。明かり……消して」
九条くんは小さくうなずくと、シーリングのライトを消した。
壁の隅の淡い間接照明だけが残って、二人の姿を影絵のように浮かび上がらせる。
私は数歩進むと、背の高い九条くんを上目遣いに見て、そして目を閉じた。
軽く触れあった唇が、やがて強く吸い合って、舌が熱く絡み合った。
私は九条くんに強く抱き締められて、雲に登るように、意識が遠くなって行く。
そして抱き合ったまま、ベッドに押し倒された。
彼の手が、口が、舌が、私の全身を愛撫して、しなやかな指先が、私の敏感な部分をゆっくりと開いていく。
声を漏らす私に、九条くんは優しく囁いた。
「理恵……愛してるよ」
九条くんが、そっと押し開くように、私の中に入ってくる。
忌まわしい影は、もうどこにも無かった。
ようやく私は、あの黒い記憶から解き放たれた。
九条くんの愛を、この身体の全てで受け止めることができる。
彼と一つになって、愛の悦びを重ねていける。
「まあくん、まあくん……!」
私はうわ言のように、繰り返した。
「大好き、まあくん……! いっぱい、愛して……!」
九条くんの動きが、激しく、荒々しくなってくる。
私もそれを迎え入れるように、彼の動きに合わせて、身をよじった。
もうほとんど、意識は無かった。
私の中に刻まれる彼の動きを感じながら、声にならない声をあげて、彼と二人、激しく登りつめる先だけを、全身で待っていた。



