次の日、私たちはニューヨークに戻る高見澤さんを羽田空港で見送った。
「本当に……ありがとうございました」
篠原さんが目に涙を浮かべながら、深々とお辞儀をする。
「泣くほどのことかよ」
高見澤さんはぶっきらぼうに言ったけど、とても優しい目で篠原さんを見ていた。
「なんならこっちに遊びに来ればいい。マンハッタンの観光巡りくらいなら、何時でも付き合うさ」
「本当ですか?!」
ぱっと花が咲いたような様子の篠原さんを見て、紫月さんが呆れたように、
「直人。随分と明日美ちゃんには優しいじゃないの」
「俺はいつだって可愛い女の子の味方なのさ」
「なぜかしら、ときおり無性にあなたのことを蹴っ飛ばしたくなるのよね」
大げさに肩をすくめてみせる高見澤さんに、私は訊いてみた。
「高見澤さん。こちらに来る前に、カマをかけたっておっしゃっていたのは、もしかして……?」
「ご推察のとおり、黒木女史のことだよ」
高見澤さんは笑って言った。
「あんたにあんな暴言をぶつける奴だ、他人に酷薄なキャラクターってことは想像がついた。他人に酷薄な奴ほど、自分が可愛くて仕方がないだろうからな」
そして、いつもの人の悪そうな笑みを浮かべて、
「御倉とシャキールが敵に回った。田村部長はおしまいだから、共倒れになりたくなかったら、こっちに寝返ろって言ってやったのさ」
「じゃあ、こちらに来てから言った、スペードのエースって……?」
「それも黒木女史と、あのアクセスコードのことだ。アクセスコードなしでも追い詰められるだけの準備はするつもりだったが、コードが手に入っているのといないのとでは、相手に与えるインパクトが違うからな」
「……あなたが味方で、本当に良かったです」
私は心からそう言った。
篠原さんもとろけるような瞳で、高見澤さんのことを見つめている。
紫月さんだけは相変わらず、全身恋色に染まった篠原さんを、渋い顔で眺めていた。



