「せんぱいっ!」


遠くから足音と声が聞こえた。


「鵜飼くん……」


電話は切られ、本当の声が鼓膜を震わす。



「先輩、大丈夫ですか……?」


「大丈夫だよ……。呼び出しちゃってごめんなさ……っ」


目の前が、真っ暗になる。

身体が暖かくなって……。



「麻奈先輩……っ」

「っ、うぅ……っ」


抱きしめられている、ということに気づいたのは、それから数秒後だった。


「大丈夫です。俺がいるから」



背中を優しく叩かれ、我慢していたものが溢れ出すように涙が出てきた。

その言動に間もずっとリズムよく背中を叩いてくれて、心地よかった。