仕事が重なる今の時期。こうした雑事が増えれば見落としが懸念されるから、気になるところではあるけれど。

 そう考えながら、朔埜はニヤリと笑った。
 こんなところに(●●●●●●●)調査だなんて、それこそ何も知らずに来た事は明白だ。
「あら、似てきましたなあ……」
「何が?」
 ついでに卓の端の茶菓子に手を伸ばしていると、三芳が嬉しそうに口にした。
「大旦那様にや、似てきましたわ」

 大旦那とは祖父の事だ。
「──育ての親だからやろ」
 ふんと鼻を鳴らして菓子を頬張る。

 実際は母が再婚し、義父となった人よりも祖父との時間は短いのだ。
「まあ、そうでしょうけども……」

 懐かしむような眼差しを向け、三芳は改めて朔埜に目を細めた。
「お見合い話と言い、ほんに大きゅうなりましたわな、若旦那も」
「ほっとけや」

 ここにきたばかりの頃、朔は三芳に礼儀作法をきっちり躾られた。そんな三芳はある意味祖父よりも頭の上がらない人なのだ。

「まあ、そう膨れんと。期待してますよ。葵はん(●●●)
「……煩いわ」

 むすりと口元を引き結び、お茶を喉の奥にずずっと流し込んだ。