それから十五年経ったある日、四ノ宮家が朔埜を迎えに来た。母は再婚していたし、朔埜は家を出てほぼ自活していたから、最初は四ノ宮と言われてもピンと来なかった。勿論父親という言葉に浮かんだ感情も忌まわしいものでしかない。

 その頃の朔埜は、所謂(いわゆる)不良だった。
 染髪に着崩した制服。
 自分の存在意義さえ不明瞭になり、真面目にやってるのも馬鹿らしくて、不貞腐れていた。だから両親も朔埜を遠ざけたのだろうけれど。

 それなのに目の前には祖父を名乗る人がいる。
 血縁者ではあるが、見た事も聞いた事もない人。それなのに──

『やあ、初めまして』

 朔埜は何故か、この老人にどう声を荒げていいのか分からなかった。ただの年寄りとして片付けるには、曲者感が否めないけれど……