京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜


 史織は勤め人だ。
 だから一ヵ月の間、理由もなく仕事を休めない。

 だからそこは千田が根回しをした。

 ──『有名老舗旅館のおもてなしを知る』企画。

 レポートだ。

 半年程前に史織が提出してボツ案となった企画が通り、そのレポートを書くという、建前の仕事ができたのだ。
 自分の欲望の限りを書き連ねた企画書だったので、かなり熱を入れて書いたのを覚えている。だからボツった時はがっくりと落ち込んだのだが、今更こんな形で日の目を見るのも複雑だ。
 
 ただその記事が活かされるかどうかは正直怪しい。凛嶺旅館の許可を得られるのは、麻弥子と朔埜の婚約が成立しないと、それくらいのコネがないと難しい。

 まあ、難しい話は置いとく事にしよう。
 当事者でありながら他人事のような話ではあるが、既に現状にいっぱいいっぱいであるのも事実なのだ。