母との攻防終了後、史織は釣書を眺めてあれこれ考えている間に、旅の疲れから眠ってしまっていた。
気がついたのは布団の上からポコポコ叩く誰かの手に起こされたからだ。
「おーい、姉ちゃんお帰りー。風呂沸いてるけど、入らないの〜?」
にこにこと笑顔を向けるのは弟の直樹だ。
「ただいま直樹」
「お土産は?」
眠気を払うように目元を擦っていると、早々に催促されてしまった。お風呂云々はついでだろう。
高校三年生、十七歳の弟は、まだ子供らしさが残った顔立ちではあるが、まあまあ整った顔をしている。
たまに彼女と歩く姿を見てはそわそわと隠れたりしているが、気まずいのはそれくらいで、比較的仲の良い姉弟だ。



