京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜


 そうだ。あの時、朔埜に藤本との事を誤解されたくなくて、四年前について話したんじゃないか。
 ……ただその時にはもう、史織はとっくに朔埜に惹かれていたのかもしれないけれど。
(だからきっと、私はあんなに必死に言い訳を……)

 わああああ。
 自分は朔埜が大好きなんだと、しかもそれを当人に熱心に語っていたと知り、益々身体が熱くなる。

「史織、もう二度と俺を忘れるな。そうじゃなきゃ嫌って程お前に俺を刻み込むぞ」
 低い脅しに、ひいっと喉の奥が引き攣るのを感じる。
「わ、わかりました。肝に銘じます!」

 とはいうものの。
 今から忘れるのは、絶対に無理だろうけれど。とひっそりと思う。

「お前肝ないやろ。嘘言うなや」
「……言葉のあやですよ。何言ってるんですか」

 むうと頬を膨らませていると、やっと朔埜が手を離してくれた。
「取り敢えず、当面はこれで」

 そう言って素早く片手で腰を抱かれ、唇にふわっと優しい感触があって……

 近すぎる顔が少しずつ離れていったと思ったら、悪戯っぽい眼差しがこちらを覗き込んだ。