ぎゅ、と掴まれたままの手を握り込む。
不意に水葉の言葉が頭を過った。
朔埜の悩みを憂いているようだった。
垣間見た父や弟との確執。
それにもしかして、結婚を……悩んでいるのだろうか。
(乃々夏さん……)
躊躇っているという事は、大事な相手なのだろう。
先程の昂良とのやりとり然り、朔埜は不必要だと思えば、切り捨てるような気がするからだ。
(でも……)
朔埜は、史織に気持ちを告げてくれた。
大事にしたい。信じたい。
史織だって朔埜が好きなのだ。
「私は、若旦那様が、好きです」
「史織」
朔埜は驚いた顔をしたけれど、すぐに蕩けるような笑みを作った。
「うん、俺と一緒になってくれ」
その為には沢山話をしなければならないけれど、
「はい」
頷く事に躊躇はない。
「お前は俺が大好きなんやもんな」
「──はい?」



