聞こえた言葉の意味が分からなくて。
眉間に皺を寄せ、目を閉じて、再び開ける。
目の前には真面目で、けれどどこか泣き出しそうな顔をした朔埜が口元を戦慄かせていた。
「ずっとお前を……その、好きやった……から。でも、そう言ったら嫌かと思って、やな……」
躊躇いがちに告げる朔埜は何だか歯切れが悪い。
それでも好きという言葉に反応し、じわじわと掴まれている手首が熱くなっていく。
「え、あのっ……私を? 覚えて……いたんですか?」
恥ずかしさを誤魔化すように口にすれば、朔埜はもの凄いしかめ面をした後、こくりと頷いた。
どうしよう、そんな仕草も可愛い。背けた横顔から耳が赤く染まっているのが分かる。
……というか、いつから気付いていたのだろう。
自分なんて今さっきだったのに……まさか最初から……
「史織」
「ひゃいっ?!」
思わず声が裏返ってしまう。
「……俺は、気持ち悪いか?」
「え? いいえ! 全然……ただその、驚いています。私は、その。あの時若旦那様に助けて貰っただけで、何もしていないので……ただ靴を壊して動けなくなってただけですよ?」
だから不思議でしかない。



