「SHAPのLIVEのスポンサーに千田の名前があったよね」
「うふぅっ?」
胸を抑えて固まる母に史織は息を吐いた。
「もう、そんな事だと思ったよ」
『SHAP』というのは母が大好きな韓流アイドルのグループだ。
今度武道館LIVEをやるのだが、チケットを必死に取っているのを数ヶ月前に見かけ、よく覚えている。何よりリビングに掛かっているカレンダーにはその日目掛けて毎日バツ印がつけられているのだ。言わずともがなである。
胡乱な目をする娘に母は拳を振り上げて力説を始めた。
「だって! スン様の来日は二年振りなのよ! 前回のLIVEは遠隔トークだけで実物は拝めなかったし! 海外チケットは手に入らないし!」
「……」
史織は誰かの熱狂的なファンになった事が無いからその手の事は分からないのだが。
「公私混同は良くないと思うよ」
「そういうのいいの! お母さんそういうのは、もういいから!」
「何もよくありません」
史織は、ふうと息を吐いた。



