京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜


 それは多分史織が「普通に働いている」から。良家のお嬢様の麻弥子は、結婚するまで家事見習いで家にいるのが当たり前で、自由に過ごしている人だ。
 そのせいか、せいぜいお年玉でしか千田家の恩恵を受けない史織とは、価値観が全く違う。

『馬鹿馬鹿しいよ、しおちゃん。お給料それしか貰ってない会社で働くなんて。私のお小遣いより少ないじゃない』

 うっかり大学卒業の初任給を口走った史織は少なくないショックを受けたものだ。同時に話す相手を間違えたと、とても反省した。これが所謂住む世界が違うというやつだろう。
 
 そんな価値観の違いがあるから、麻弥子は悪い子では無いけれど、どう付き合ったらいいのがが分からない人、というのが史織の感想だ。

 まあ史織も、世間知らずだと言われた過去があるので、あまり人の事は言えないが……