「でも、大っぴらに破談という訳では無いんです。うちにとっても千田との縁は重要ですから。内々で済ませようと思いましてね、だから俺が直接話しに来たんです」 そう言って昂良は唇に人差し指を立てて、片目を瞑ってみせる。 そんな可愛らしい仕草も様になっているのだから大したものだ。けれど、その話はついさっき決まった事でもないようだ。 破談ではないけれど……結局朔埜は乃々夏さんを選んだという事だ。 その事が史織の心を重くする。