「辻口」

 はたと顔を上げれば、こちらを向く乃々夏と目が合った。
「お前のところにも彼女からのSOSは届いていて?」
「はい、共有されておりました」

 辻口の家は代々四ノ宮に仕えてきた。
 本来なら朔埜の弟、昂良に付く筈だったが、乃々夏付きの護衛に抜擢された。
 
「行かなくて良かったの?」
「……朔埜様が行かれましたので」

 そう、と呟き、乃々夏は目を細める。

「お前がいれば四ノ宮は大丈夫よね、あたしも安心して嫁げるわ」
 けれど満足そうに告げる声音には、「やっぱりね」と、どこか失望を宿しているように見えた。